【1分怪談】受付の名簿

冠婚葬祭の受付を手伝う仕事を、副業でしている。結婚式や法事など、依頼があれば各地の会場に出向く形だ。

これは、去年の秋に担当した、ある法事での話だ。

会場は地方の古い寺で、参列者は親族中心の、こぢんまりとした集まりだった。受付で香典を預かり、芳名帳に記帳してもらうのが自分の役目だった。

式が始まる直前、芳名帳を確認していて、妙なことに気づいた。

参列予定者の名簿と照らし合わせると、一人だけ、どうしても名前と字が合わない記帳があった。

達筆すぎて、他の誰の字とも似ていない。しかも、その欄に書かれている名前は、名簿のどこにもない人物のものだった。

受付の担当者は自分一人だったし、その時間、誰かが勝手に記帳するような隙はなかったはずだった。念のため、施主に確認したが、心当たりはないという返事だった。

その日の式は、特に何事もなく無事に終わった。芳名帳はそのまま施主に渡し、深くは考えないようにした。

数週間後、別の仕事で、たまたま同じ施主の家を再び訪れる機会があった。世間話のついでに、あの記帳のことを、それとなく尋ねてみた。

施主は少し驚いた顔をしてから、こう教えてくれた。

「その名前、実は、もう三十年近く前に亡くなった、私の叔父のものなんです」

その法事自体、実は叔父の三十三回忌に合わせて、他の法要とまとめて営んだものだったのだという。

芳名帳のその部分は、結局、誰の字なのか分からないまま、そのまま保管されているらしい。

それ以来、受付の仕事をするたびに、芳名帳に書かれる一文字一文字を、以前より少しだけ注意深く見るようになった。

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