【1分怪談】倉庫の巡回

夜間警備の仕事をしている。担当しているのは、郊外にある大型の物流倉庫だ。

もう五年近くこの仕事を続けているが、深夜、決まった時間に館内を巡回するのが日課になっている。敷地はかなり広く、A棟からD棟まで四つの建屋に分かれていて、一晩で全棟を二周する決まりだ。

広い倉庫内は天井近くまで届く棚が何列も並んでいて、消灯後は非常灯の薄明かりと、自分が持つ懐中電灯だけが頼りになる。慣れてはいるが、正直、今でも好きな時間帯ではない。

ある夜、いつも通りA棟の巡回をしていたとき、棚の奥から物音がした。

段ボールが崩れるような、ドサッという鈍い音だった。時計を見ると、午前二時を少し過ぎたところ。倉庫内には自分以外、誰もいないはずの時間だ。

念のため確認しに行くと、棚の一角、確かに段ボールが数箱、床に崩れ落ちていた。ただ、落ちた拍子にできるはずの土埃や、荷崩れの跡がどこにも見当たらなかった。

まるで、誰かが丁寧に積み直して、そのままそっと落としたような崩れ方だった。

一応、崩れた箱を元の位置に戻し、その日の日報にはそのまま「A棟一部で荷崩れあり、原因不明」とだけ書いて提出した。

その夜以来、月に一度くらいの頻度で、同じ棚のあたりで同じような物音がするようになった。頻度が上がってきたのは、ここ半年ほどのことだ。

先輩の警備員に相談したところ、少し表情を曇らせてこう言われた。

「その棚のあたり、数年前に一人、作業中の事故で亡くなった人がいるらしいよ」

詳しい場所までは聞かなかったし、それ以上は聞けない空気だった。

ただ気になって、後日、休憩室に置いてある古い引き継ぎノートをこっそり見返してみた。何年分も遡ったページの隅に、一行だけ、走り書きのようなメモが残っていた。

「A棟の棚、夜中に整理する人がいる。邪魔しないこと」

書いたのが誰なのか、日付も名前も記されていなかった。

それ以来、その棚の前を通るときだけは、懐中電灯を少し早めに動かし、なるべく足を止めないようにしている。

先週の巡回で、久しぶりにあの音を聞いた。今度は崩れる音ではなく、段ボールが規則正しく積み上げられていくような、コン、コン、という乾いた音だった。

振り返らずに、そのまま次の棚へ進んだ。

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