土地の測量調査を手伝う仕事をしている。古い土地の境界確認や、分筆のための現地調査が主な業務だ。
これは、去年の秋、山あいの集落で行った調査でのことだった。
依頼された土地は、何十年も相続の手続きがされないまま放置されていた、古い山林だった。境界がはっきりせず、現地で改めて確認作業をすることになった。
先輩と二人で現地に入り、古い図面を頼りに、境界標(土地の角を示す杭)を探していく。多くは長年の風雨で埋もれていたり、朽ちていたりして、なかなか見つからなかった。
作業の途中、先輩がふと、少し離れた場所を指差してこう言った。
「あそこにも一つ、標識っぽいのがあるな」
見に行くと、確かに古い木製の杭が地面に打たれていた。ただ、図面上のどの境界点にも該当しない、記録にない位置だった。
杭には、風化して読み取りにくいが、何かの文字が刻まれていた。目を凝らして確認すると、それは地番でも所有者名でもなく、人の名前らしき二文字だった。
不思議に思いながらも、その日の調査自体は無事に終わり、必要な境界標をすべて確認できた。
後日、事務所に戻ってから、念のため、その土地の古い登記記録を遡って調べてみることにした。
すると、その山林では、数十年前、境界を巡るトラブルの末に、当時の所有者の一人が行方不明になったという記録が残っていた。
その人物の名前は、あの杭に刻まれていた二文字と、一致していた。
先輩にその話をすると、少し表情を曇らせてこう言った。
「そういう土地、たまにあるんだよな。境界がおかしい場所には、大体、何かしらの経緯があるもんだよ」
それ以来、現地調査で記録にない杭を見つけると、必要以上には近づかないようにしている。

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