商店街の外れで、小さな写真館を営んでいる。祖父の代から続く店で、今でもフィルムカメラの現像を扱っている、数少ない店の一つだ。
これは、去年の秋にあった話だ。
顔なじみの常連客が、古いフィルムを何本か持ち込んできた。実家の整理をしていたら、押し入れの奥から出てきたのだという。撮影時期も分からない、かなり古そうなフィルムだった。
いつも通り現像作業を進め、写真を仕上げていく中、一枚だけ、明らかに様子のおかしいカットがあった。
家族写真のような構図で、縁側に座る数人の人物が写っている。だが、その中の一人だけ、顔の部分が、まるで何かで擦り消したかのように、白くぼやけていた。
現像過程での失敗かとも思ったが、同じフィルムの他のコマには、そうした異常は一切見られなかった。その一枚だけが、不自然だった。
念のため、その写真をコピーしてから、常連客に現物を渡した。渡すとき、その人物について尋ねてみたが、客は写真を見て、少し表情をこわばらせた。
「これ、誰なんでしょうね。うちの家族に、心当たりがある人がいなくて」
詳しくは分からないまま、客はその日、写真を持ち帰っていった。
数日後、その客が再び店を訪れた。実家の親族に確認したところ、その写真が撮られたと思われる時期、家族の中に、幼くして亡くなった子供が一人いたことが分かったのだという。
写真自体に、その子が写っているかどうかは、今となっては誰にも分からない。ただ、顔の部分だけが不自然に消えていたあの一枚のことを、客はそれ以来、時々口にするようになった。
自分の手元に残しておいたコピーは、今も店の奥にしまってある。時々見返すことがあるが、そのたびに、あの白くぼやけた部分だけが、やけに気になってしまう。

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