【1分怪談】夜光虫の夜

これも知り合いから聞いた話。

10年くらい前、友達3人でナイトフィッシングに行った。

堤防じゃなくて小型のゴムボートで沖に出るタイプ。免許いらない2馬力までのエンジンで、Y県O町の漁港から出たらしい。

DAY1。

その日は凪。波もほとんどなく、絶好の条件だった。

夜9時に出航、沖合1kmくらいのポイントまで進んだ。アジ狙いで仕掛け垂らして、しばらくは順調に釣れてた。

そのうち一人が「なんか船の下、光ってね?」と言い出す。

見ると海面が青白く発光していた。夜光虫というやつで、最初は3人ではしゃいでいたらしい。

だがその光、だんだん船の周りだけじゃなく、こっちに一直線に伸びてくるように見えてきた。

一人が「なんかヤバい、帰ろう」と言い出す。

エンジンをかけようとしたが、かからない。さっきまで普通に動いてたのに、何度引いても反応なし。

そうこうしている間に、光の帯が船のすぐ下まで来て、水面の下を黒い影のようなものが横切った。

魚にしては大きすぎる、人が浮いているようなシルエットだったという。

3人とも無言のまま、オールで漕いで戻る判断をした。

無我夢中で漕ぎ続け、30分ほどで何とか港に着いたらしい。

エンジンは、港に着いてから試すと普通にかかった。

あれが何だったのか、今もわからないと言っていた。

後で知り合いの漁師に話したところ、あの海域は昔、漁船の転覆事故があった場所らしい。

それ以来、誰もそのポイントでは夜釣りをしなくなったという。

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