【1分怪談】試着用の一本

駅前の眼鏡店で働いている。フレームの試着や視力測定のお手伝いをするのが主な仕事だ。

店には、試着用のサンプルフレームが何十本も並んでいる。棚卸しの際、その本数を確認するのも、月に一度の業務の一つだった。

ある月の棚卸しで、リストと実物を照らし合わせていると、見覚えのないフレームが一本、紛れ込んでいることに気づいた。

古めかしいデザインで、今の在庫リストのどこにも載っていない型だった。廃盤になった商品かとも思ったが、店の履歴を遡っても、そのようなフレームを扱った記録は見当たらなかった。

一応、店長に報告し、事務所の引き出しにしまっておくことにした。

翌月の棚卸しで、また同じフレームが、試着用の棚に戻っているのを見つけた。

引き出しの鍵は自分と店長しか持っていないはずだったが、店長にも心当たりはないという。

念のため、もう一度引き出しにしまい直した。

その夜、閉店作業をしていると、試着用の鏡の前に、誰も座っていないのに、フレームだけがぽつんと置かれているのが見えた。

近づいて確認すると、それは事務所にしまったはずの、あのフレームだった。

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